好いーと九州

Mr.Win's Roomの1コンテンツ。 大好きな九州の史跡や喫茶情報などを集めたページ。

2019年01月

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玉名の郷土史を扱う歴史館がこころピアだ。
2019年3月まで改装中のため、筆者は残念ながら常設展示はまだ観れていないが、大河ドラマの主人公である金栗四三の特集コーナーは既に観覧可能。
以下、金栗コーナーについて紹介したい。

金栗コーナーは、1スペースのみの小さな展示エリアではあるが、
・ストックホルム五輪の大会プログラム
・アントワープ五輪でのランニングシャツ
・パリ大会胸章
・体力・気力・努力の書
・55年ぶりスウェーデン訪問時の招待状やパネル
などがある。

この中で私が特に興味を抱いたのは、55年ぶりのスウェーデン訪問時の招待状だ。
原文、そして日本語訳の両方が展示されており、こんな文章がある。

「この手紙を書いておりますスウェーデンオリンピック協会の経理部長であり協会の幹部会役員の私は1964年東京オリンピックの開会式直前にあなたにお目にかかりましたが、覚えておいででしょうか。
思い出しますに1912年にも私は貴下にお目にかかりましたが、55年後にまた、ストックホルムオリンピック競技場で貴下を歓迎できますことは、まことに嬉しく存じます」

つまり、招待状を書いたスウェーデンのオリンピック協会経理部長もまた55年前に金栗四三と出会っていた人なのだ。
無論、55年前に"金栗四三"という人物を意識してはいなかったかもしれないし、1964年にも再会はしている。
だが、55年の時を経て、オリンピックを愛し、スポーツ振興のために尽くしてきた人々がこうしてスウェーデンで再会したということに、私は感動を覚える。

「日本の金栗、ただいまゴールイン!タイム、54年と8ヶ月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回ストックホルムオリンピック大会の全日程を終了します」

なんともユーモアと愛情溢れるアナウンスだ。

ところで、金栗コーナーを観終わり、博物館でバスを待つ間、壁に貼られた地元小学生が書いた習字作品を読んでいた。
書かれている文字は「走る」。"いだてん"の町らしい文字だ。
その感想を、博物館のスタッフさんに話したところこう仰っていた。

「四季折々でマラソン大会があるし、小学校で金栗さんの呼吸法を教えられたのを覚えている。大河ドラマにならなくても、金栗さんは地元では有名人なんです」

玉名市、和水町は勿論、天草でも「遅いあなたが主役です」で有名な天草パールラインマラソン大会がある。
金栗さんは、熊本の人なら皆、馴染みがある有名人なのだ。

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博物館には、熊本大地震で止まった時計も展示されていた。
まだまだ完全復興に向けて長い時間が必要だが、私はこれからも"がまだせ熊本!"を合言葉に応援し続けたいと思う。
常設展が再開される2019年3月以降、また訪れてみよう。

【基本データ】
営業時間:開館時間9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:
毎週月曜日(当日が祝日の場合はその翌日)
祝日の翌日(その日が日曜日のときを除く)
年末・年始(12月28日から1月4日まで)
入場料:
一般300円(210円)
大学生200円(140円)
高校生以下は無料。
「こどもの日」「文化の日」は無料日。
( )内は20人以上からの団体割引料金。
障がい者手帳等をお持ちの方は、ご本人および付き添いの方1名が無料。
アクセス:
アクセス:2020/1/13までは新玉名駅前、玉名駅前より「金栗四三周遊バス」有り。(時刻表はこちら
あるいは玉名駅よりタクシーで約8分(徒歩では約2.5km)

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金栗四三ミュージアムから更に5km程歩くと、金栗四三の生家がある。

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田畑が広がる中、少し坂を上がるとある家が四三の生家で、入口には二畳ほどの小さな部屋が。

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通称・学校部屋。成績優秀であった四三のための勉強部屋で、四三は声をはりあげて勉強していたそうだ。

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金栗家は、代々地域の庄屋をつとめる家系で、酒屋を営んでいた。
1階の面積は約246㎡で、広い土間と茅葺きの高い屋根と天井が特徴的な造り。
四三はたまなちゅうがっこうに入学するまで14年間を過ごした。
酒造りは四三が生まれる数年前にやめたが、本館では酒造業を営んでいた頃が再現されている(パンフレットより抜粋)

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この生家で大河ドラマの撮影も行われた。登場人物の生家で撮影が行われるのは初のこと。
他にも、内部には吉地小学校の修了書、玉名北高等小学校の褒状などのコピーパネルなど展示されている。

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出口前には、大河ドラマの人物紹介パネルが。

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当時の庄屋規模の農家がどのような暮らしをしていたかが分かる。

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少し歩くと、体力・気力・努力の石碑も。

歩いて行くのは若干時間がかかるが、それでも田畑を眺めつつのんびりと行くのをおススメする。
四三気分が味わえる。

【基本データ】
オープン期間:2019/1/11~2019/12/23(無休)
営業時間:開館時間9:00~17:00(最終入館16:30) 
入場料:
大人(高校生以上)300円
小人(小・中学生)200円
※団体入場券(20名以上)は公式ウェブサイト参照
アクセス:
▼自動車を利用される場合
 九州自動車道 南関I.Cから15分
 九州自動車道 菊水I.Cから20分
 熊本市から約1時間(一般道利用)
 福岡市から約1時間(高速道路利用)
▼鉄道を利用される場合
 JR鹿児島本線 大牟田駅から車で40分
 JR鹿児島本線 玉名駅から車で40分
 JR九州新幹線 新大牟田駅から車で20分
 JR九州新幹線 新玉名駅から車で30分

<出演>
博多華丸、富田靖子、瀬口寛之、斉藤優、井上佳子、福場俊策、柄本時生、でんでん、豊嶋花、吉本実憂、ゴリけん他

<ストーリー>
昭和30年代。戦後最大の引揚港でもあった福岡は戦争の傷跡を残したまま、復興を遂げようとしていた。
主人公・海野俊之は焼け跡となっていた中洲の一角に小さな食料品店「ふくのや」を立上げ、妻の千代子と営んでいた。博多の祭り<博多祇園山笠>に情熱を燃やし盛り上げてきた「山のぼせ」でもあった。
一方で俊之には山笠と並んで熱中しているものがあった。それは「めんたいこ」作り。
戦前、日本の統治下でもあった韓国の釜山で生まれ育った俊之は、当時の思い出の味「明卵漬 → ミョンランジョ」をヒントに明太子を作り出し、日々味の改良を重ねていたが、なかなか納得できる味に近づかず苦悩の毎日だった。
そんな時、俊之は息子・健一の同級生、英子の存在を知る。両親をなくし、親戚に引き取られていた彼女は遠足に行く為の新しい靴やリュックサックも買えないというのだ… 「映画 めんたいぴりり」では、ドラマと同様に、戦後の混乱期を乗り越え、経済は復興から成長へとシフトしていく「昭和」という時代の光と影を描きます。
「映画 めんたいぴりり」はドラマでは語りきれなかったエピソードも加え、福岡の代表的な惣菜として知られることに なった「辛子明太子」が出来上がるまでを「笑い」と「涙」を交えながら描いていきます。(公式ウェブサイトの"あらすじ"より)

<感想>
以下、ネタバレ有りなので、これから観に行く方はご注意を。

めんたいぴりりは博多座で舞台版を観て以来。
なので、その時との比較ベースで書きたいと思う。

舞台版、映画版ともに共通しているのは、ドラマ版の第二部、つまり俊之(博多華丸)と千代子(富田靖子)が帰国し、中洲で食料品店「ふくのや」を経営して以降が描かれているという点。
特に、映画版では、"あらすじ"の通り、戦後から成長へ……という復興の様子が、俊之自身の挫折→立ち直りとリンクしながら描かれている。

また舞台版では「俊之が明太子を試行錯誤して完成させていく過程」、「山笠の復興」が主軸だったが、映画版は戦後の貧しさに苦しむ人だったり、明太子好きの丸尾さん(でんでん)が自殺したりと辛いエピソードも入れつつ、それでも「明太子で人を幸せにする!」と情熱を注ぐ姿に力点が置かれている。

登場人物では、まずは千代子を演じるのが映画版はドラマ同様、富田靖子さんだということ(舞台は酒井美紀さん)
また舞台版の準主役級であったチンピラに追われる女・恵理子(林田麻里)、ヤクザの親分・矢島(宇梶剛士)などが出ていないかわり、俊之の息子・健一(山時聡真)のクラスメイト・英子(豊嶋花)や、健一の担任・花島先生(吉本実憂)が登場しており、特に英子の明太子へのセリフが、俊之の喜びや悲しみに繋がっていく。

ちなみにヤクザもんは全く出ないわけではなく、千代子が追い返すシーンがあり、これが面白いので是非作品で!
その千代子が熱狂的に応援している(神様・仏様・)稲尾様も登場(演じているのは髙田延彦!)

山笠は映画でも、人々が楽しみにしている行事として登場し、その中止を回避すべく、俊之が支援する様子も描かれており、祭りの様子もしっかりと入っています。

俊之の脳裏に時折フラッシュバックされる戦時中の記憶は、映画だと唐突な感なきにしも非ずだが、原作やドラマ、舞台を知っている人なら、違和感なく入ってくるシーンだ。

……と色々書いたが、どの版でも変わらない最大の見どころは、やはり博多大吉先生演じるスケトウダラの妖精と俊之との掛け合い。
大吉先生が登場する度に、映画館の中でも笑いが起こっていました。

そんな大吉先生、ゴリけん相手にエンドロール後に「ドラマに比べて大分セリフが減ったなぁ」とツッこんでいます(笑)

明太子への情熱だったり、博多の街への感謝だったり、ライバル出現時の対応だったりと、俊之の器の大きさ、温かさは本当に素晴らしい。
やっぱり博多は最高たい!と思うひとときでした。

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いだてん大河ドラマ館とともに2020年1月13日まで、金栗四三の故郷・和水町でオープンしているのが「金栗四三ミュージアム」だ。

玉名駅界隈から15km前後北となるため、金栗四三ゆかりの地を巡る「金栗四三周遊バス」では対象外のエリアだが、2019年1月26日~3月31日の間、土日祝のみ大河ドラマ館・金栗四三ミュージアム間をシャトルバスが運行する。(詳細はこちら

展示内容は大きく以下の通り。
・幼少期からストックホルム五輪、後進育成など期間ごとに、四三の生涯を紹介したパネル
・四三ゆかりの品々
 ストックホルム五輪で着用したユニフォームや持っていった茶色のボストンバック、
 兄からの手紙、硯、パスポート、ストップウォッチ、
 オリンピック国内予選大会の優勝カップ、革靴、山高帽など
・横長スクリーンでの、「金栗四三の生涯」紹介映像
・かけあし登校の紹介映像
・四三が創設した箱根駅伝とそこで活躍した選手の紹介パネル

この他、
・アシックスの展示コーナーとして、高橋尚子や野口みずきのシューズ
・1964年の東京オリンピックに出場した中嶋功、石原勝記のブレザー
珍品としては、マラソン足袋型のソファーなども展示されている。

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箱根駅伝コーナーでは、四三が、アメリカ大陸横断駅伝を夢見ており、「日本で予選やるなら、天下の険である箱根だろう」ということで箱根駅伝が誕生したというエピソードが紹介されていた。

大河ドラマ館が、ドラマに焦点を当てているのに対し、本ミュージアムは実在の金栗四三がテーマ。
その生涯をより詳しく知りたいという方、さらにはのどかな田舎・和水町を満喫したい方におススメのスポットだ。トータルで、じっくり観ても1~1.5時間あれば観覧できる。
また、ミュージアムからさらに約5km先には、金栗四三生家がある。

和水町の紹介
和水町は熊本県北部に位置する盆地型のエリアだ。
国史跡である大規模古墳・江田船山古墳や謎の遺跡・トンカラリンなどがある。
また戦国時代、佐々成政による検地に反対した肥後国衆の一揆で砦となった「田中城」跡もあり、その壮絶な戦いを再現する「戦国肥後国衆まつり」などが開催されている。

のどかな田舎で、古民家を移築復元した「肥後民家村」、目、耳、手足など、身体にまつわる「八つの神様」なども。
金栗四三ミュージアムすぐ横には、三加和温泉があり、旅の疲れを癒してくれる。
アルカリ性の高さは九州でもトップクラスの美肌の湯だ。

【基本データ】
オープン期間:2019/1/11~2020/1/13
営業時間:開館時間9:00~17:00(最終入館16:30) ※初日と最終日は異なる
入場料:
大人(高校生以上)600円 前売/480円
小人(小・中学生)300円 前売/240円
※団体入場券(20名以上)は公式ウェブサイト参照
アクセス:新玉名駅前、玉名駅前よりタクシーで20分程度(3,000~3,500円)
※2019年1月26日~3月31日の期間は土日祝のみシャトルバス運行(詳細はこちら

金栗四三ミュージアム 公式ウェブサイト

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金栗四三翁居宅から歩いて数分のところ、急な坂を上ったところに金栗四三の墓がある。

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墓石横には墓に眠る累代の名が刻まれており、四三の名も見える。

また墓石手前には、座右の銘とも言える「体力・気力・努力」に、四三、スヤ夫妻それぞれの短歌が刻まれた碑(裏には、四三の功績が刻まれている)が建つ。

若人の 走り競ふを 見つつゆけば ストックホルムの マラソン偲ゆ

四三翁・老年期の心境を詠ったと思われる。

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墓からは小田地区の景色が一望できる。
居宅と併せてお参りしたい。

【基本データ】
営業時間:終日
入場料:無料
アクセス:2020/1/13までは新玉名駅前、玉名駅前より「金栗四三周遊バス」有り。(時刻表はこちら
あるいは新玉名駅よりタクシーで8~10分(徒歩では約4km)

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